2020年04月12日

宅建士試験過去問 権利関係 不法行為 2−42 平成24年

Aに雇用されているBが、勤務中にA所有の乗用車を運転し、営業活動のため、得意先に向かっている途中で事故を起こし、歩いていたCに危害を加えた場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば正しいものはどれか。

1、BのCに対する損害賠償義務が消滅時効にかかったとしても、AのCに対する損害賠償義務が当然に消滅するものではない。
2、Cが即死であった場合は、Cには事故による精神的な損害が発生する余地はないので、AはCの相続人に対して、慰謝料についての損害賠償責任を負わない。
3、Aの使用者責任が認められてCに対して損害を賠償した場合には、AはBに対して、求償することができるので、Bに資力があれば、最終的には、AはCに対して、賠償した損害額の全額を常にBから回収することができる。
4、Cが幼児である場合には、被害者側に過失があるときでも、過失相殺が考慮されないので、AはCに発生した損害の全額を賠償しなければならない。



胡桃「これは、基本的な判例の知識を問う問題だわ。瞬時に答えが分からなければだめよ」
建太郎「マジか!よく分からない選択肢もあるけれど」
胡桃「たとえ、判例を知らなくても、常識で解けそうな問題だわ。そう思わない?」
建太郎「うーん。まあ、確かに常識で分かる選択肢もあるな」胡桃「まず、設問の事例では、何が問題になるか分かるわよね?」
建太郎「B自身がCに対して不法行為による損害賠償責任を負うのは当然として、Aも使用者責任を負うということだよな」

(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(使用者等の責任)
第七百十五条  ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2  使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3  前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

胡桃「つまり、CはBに対してだけでなく、使用者であるAに対しても使用者責任を追及できる可能性があるということよね」
建太郎「うん。そうだ」
胡桃「じゃあ、1は何が問題になるか分かるかしら?」
建太郎「つまり、AとBの損害賠償義務が連帯債務だということが問題になるんだよな」
胡桃「そうね。連帯債務の場合、一方の債務が消滅時効にかかると他方の債務はどうなるのかしら?」
建太郎「消滅時効にかかった人の負担部分に限り、他方の債務も義務を免れるんだよな」

(連帯債務者の一人についての時効の完成)
第四百三十九条  連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については、他の連帯債務者も、その義務を免れる。

胡桃「そうね。この規定が、不法行為による損害賠償義務の場合にも適用されるのか?が問題なのよね。どう考えるべきかしら?」
建太郎「うーん。民法の原則通りに考えれば、Bの負担部分に限り、Aも債務を免れると考えるべきなのかな?」
胡桃「実はそうはならないというのが判例なのよ」
建太郎「えっ?そうなの?」
胡桃「使用者責任の債務と不法行為による損害賠償債務は、連帯債務の関係だけども、ちょっと変わった連帯債務なのよ。正確にいえば、『不真正連帯債務』というのよね」
建太郎「うん?不真正連帯債務?」
胡桃「債務者全員が全部の債務を履行すべき義務を負っていて、一人の債務者の履行によって、全債務者が債務を免れる点では、普通の連帯債務と同じなんだけど、債務者の間に緊密な結合関係がないから、一人の債務者に生じた事由が他の債務者に影響を及ぼさないし、債務者間に負担部分がないから、当然には、求償関係も生じない。という特徴があるのよ」
建太郎「うーん。連帯保証みたいなものか?」
胡桃「連帯保証とも違うのよ。少なくとも、連帯保証の場合は、債務者と保証人が連帯保証関係にあることを認識したうえで、契約を結ぶわけでしょ。それに対して、不真正連帯債務というのは、連帯するつもりはないのに、連帯する関係になってしまったということなのよ」
建太郎「なるほど……。確かに、AとBは連帯してCに危害を加えようとしたわけではないよな」
胡桃「だから、Bに対して生じた事由がAに及ぶことは原則としてないのよ。つまり、相対的効力が原則なのね」
建太郎「でもそれって、普通の連帯債務の場合も同じだよね」

(相対的効力の原則)
第四百四十条  第四百三十四条から前条までに規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。

※(連帯債務者の一人に対する履行の請求)
第四百三十四条  連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。

(連帯債務者の一人との間の更改)
第四百三十五条  連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。

(連帯債務者の一人による相殺等)
第四百三十六条  連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。
2  前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる。

(連帯債務者の一人に対する免除)
第四百三十七条  連帯債務者の一人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる。

(連帯債務者の一人との間の混同)
第四百三十八条  連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。

(連帯債務者の一人についての時効の完成)
第四百三十九条  連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については、他の連帯債務者も、その義務を免れる。

胡桃「そうよ。不真正連帯債務の場合は、第四百三十四条から第四百三十九条に列挙されている項目でも、相対的効力となるものもあるのよ。三つあるから押さえておいてね」
建太郎「うん?」
胡桃「まず、第四百三十九条の消滅時効がそうよ。つまり、連帯債務者の一人のために時効が完成しても、他の連帯債務者も、その義務を免れる事にはならないということよ」
建太郎「ということは設問の場合、Aは依然として損害賠償責任を負っているわけだね」
胡桃「判例だから覚えておいてね。それから、請求による時効中断、債務の免除についても相対的効力とされているわ」
建太郎「消滅時効、請求による時効中断、債務の免除に関しては、相対的効力なんだな」
胡桃「それに対して、債権を満足させる事由に関しては、絶対的効力が生じるとされているわ。例えば、Aが弁済とか相殺によって、Cに対する損害賠償債務を全額弁済すれば、Bも不法行為による損害賠償債務を免れるのは分かるわね?」
建太郎「そりゃそうだろうな。後は、AとBの求償関係の問題になるわけだ」
胡桃「求償関係になるにしても、不真正連帯債務の場合は、負担部分という概念はないわ」
建太郎「するとどうなるんだ?」
胡桃「判例によれば、例えば共同不法行為については、負担部分は過失の割合によって定まるとされているわ」

(共同不法行為者の責任)
第七百十九条  数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2  行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。

建太郎「なるほど、過失の割合か」
胡桃「とりあえず、ここまで覚えておけば十分だわ。2にいくわよ」
建太郎「2は常識で考えてもおかしいよな。つまり、無念だぁ!って叫んで死んだ場合は、精神的な慰謝料が発生するけど、叫ぶ間もなかった場合は、精神的な慰謝料が発生しないということになってしまう」
胡桃「そうね。判例も、精神的な慰謝料については、即死の場合でも、被害者自身に発生するとしているわ。そして、慰謝料請求権は金銭債権だから、相続の対象になる。だから、被害者の相続人が慰謝料請求をすることができるとされているわ」

(財産以外の損害の賠償)
第七百十条  他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

(相続の一般的効力)
第八百九十六条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

胡桃「3はどうかしら?」
建太郎「AがBに対して求償できるのは正しいけど、その範囲は信義則上相当と認められる限度に限られるんじゃなかった?」
胡桃「使用者は被用者によって利益を得ているわけだから、すべて被用者に負担させるのは不公平だからよね。判例だから覚えておいてね。4はどうかしら?」
建太郎「まず、過失相殺って、被害者に事理弁識能力がなければならないんだよな」

(損害賠償の方法及び過失相殺)
第七百二十二条  第四百十七条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2  被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

※(損害賠償の方法)
第四百十七条  損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。

胡桃「そうね。設問のような幼児は、事理弁識能力がないから、幼児の行為に過失があったとしても、それを考慮するのは難しいわね」
建太郎「でも幼児自身の過失は問えなくても、親の過失は問えるよな。親がよく見ていなかったから、幼児が道路に飛び出たという場合は、親の過失ということになる」
胡桃「これも常識で分かるわね。判例も、設問のような事例では親の過失についても過失相殺を考慮するとしているわ」
建太郎「OK」
胡桃「というわけで答えは?」
建太郎「1だね」



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