2020年04月09日

宅建士試験過去問 権利関係 相続 2−41 平成27年

遺言及び遺留分に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば正しいものはどれか。

1、自筆証書の内容を遺言者が一部削除する場合、遺言者が変更する箇所に二重線を引いて、その箇所に押印するだけで、一部削除の効力が生じる。
2、自筆証書による遺言をする場合、遺言書の本文の自署名下に押印がなければ、自署と離れた箇所に押印があっても、押印の要件として有効となることはない。
3、遺言執行者が、管理する相続財産を相続人が無断で処分した場合、当該処分行為は、遺言執行者に対する関係で無効になるが、第三者に対する関係では無効とならない。
4、被相続人がした贈与が遺留分減殺請求により、全部失効した場合、受贈者が贈与に基づいて、目的物の占有を平穏かつ公然に20年間継続したとしても、その目的物を時効取得することはない。



建太郎「なんだ、この問題は!印鑑の押し方とか、やたらと細かくないか?」
胡桃「でも問われている内容は、条文に書かれているレベルのことよ。それに基本的な判例からの出題だわ」

胡桃「まず、自筆証書遺言の要件を確認しておこうかしら?」

(自筆証書遺言)
第九百六十八条  自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2  自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

建太郎「『自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。』だな。つまり、印鑑を押すことは、自筆証書遺言の成立要件なんだな」
胡桃「そうよ。自筆証書遺言の場合、印鑑のことで揉めることが多いのよ。まずは、1から確認していくわよ」
建太郎「うん。2項にある通りだよな。『自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。』二重線を引いて、その箇所に押印するだけではだめなんだよな」
胡桃「具体的には、欄外に、『本行〇字加入〇字削除』と付記して、署名しなければならないのよ」
建太郎「うん。司法書士試験ならともかく、宅建でこんな細かいことが問われるとは思わなかったよ」
胡桃「2はどうかしら?」
建太郎「うーん。第九百六十八条の条文を見る限り、押印する場所がどこかとは規定されていないよな」
胡桃「そうね。押印については、必ずしも、その書面にしてある必要はないという判例があるわ」
建太郎「うん?どういうこと?」
胡桃「遺言書自体には、署名がなかったんだけど、遺言書を入れた封筒のとじ目に印鑑が押してあったのよ。判例は、封筒のとじ印でも、押印としての効力が生じるとしたのよ」
建太郎「マジか!ということは、2のようなケースでも有効ということ?」
胡桃「問題ないはずよ。とりあえず、印鑑が押してあって、形式的な要件は満たしているわけだから、遺言書の体裁よりも遺言者の最終意思を尊重すべきだと考えれば、問題ないと分かるんじゃないかしら?」
建太郎「うん。なるほどな。遺言者の最終意思を尊重することがキーワードなんだな。でも、1のケースはだめだと?」
胡桃「遺言書の書き直しがあると、偽造の可能性もあるということよ。書き直しに関しては、要件を満たしていないと問題だわ」
建太郎「うーん。そうか。で、3は、よく分かんないんだよな」
胡桃「遺言執行者が選任されている場合ね。まず、遺言執行者って何者か分かるかしら?」
建太郎「遺言者が遺言で指定することができるんだよな」

(遺言執行者の指定)
第千六条  遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2  遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3  遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。

(遺言執行者の権利義務)
第千十二条  遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2  第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。

建太郎「そして、遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。と遺言者に成り代わって、権利行使ができるんだよな」
胡桃「そうよ。選択肢3で問題になっているのは次の条文よ」

(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第千十三条  遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。

胡桃「第三者に対しても、このことを主張できるのかどうかが問題になるわけね」
建太郎「できると解釈していいんじゃない?遺言執行者がいる場合、相続人の処分行為は、無権限者の行為ということになって、当然、無効になるんじゃない?」
胡桃「その通りよ。判例も、遺言執行者に対する関係で無効になるばかりでなく、第三者に対する関係でも無効になるとしているわ」
胡桃「次、4はどうかしら」
建太郎「これもよく分からないんだよな」
胡桃「遺留分減殺請求の問題だというのは分かるわね」

(遺贈又は贈与の減殺請求)
第千三十一条  遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。

※第千三十条  贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

建太郎「ああ。分かるよ。でも、受遺者が遺留分減殺請求を無視して、取得時効の要件を満たしてしまった場合はどうするべきかという問題なんだよな」
胡桃「そうよ。どう考えるべきかしら?」
建太郎「時効取得した受遺者が優先すると考えていいんじゃない?」
胡桃「実はそうじゃないのよ。判例は、選択肢4のような事例で、取得時効の要件を満たしても、遺留分権利者への権利の帰属が妨げられるものではない。としているのよ。つまり、遺留分減殺請求権の行使を優先しているのよ」
建太郎「でも、そうすると、被相続人の贈与が無効になってしまうわけで、被相続人の最終意思の尊重という点からみると、問題なんじゃないの?」
胡桃「確かにそうだわね。でも、被相続人の最終意思の尊重しすぎると、遺留分減殺請求権の制度が骨抜きになってしまうわ。だから、遺留分減殺請求権を優先すべきなのよ」
建太郎「うーん。むずかしいな。これは、そのまま覚えるしかないのかな」
胡桃「宅建レベルでは、とりあえず、そういう判例があることを押さえておけばいいわ。というわけで答えは?」
建太郎「4ということになるんだな」




宅建士試験の合否は過去問以外の問題をどれだけ解いたかで決まる!


□ 過去問だけでは合格できない

宅建士試験では、過去問を制覇すれば、本試験でも6割の得点は固いでしょう。
しかし、宅建士試験に合格するためには、最低でも7割以上の得点が必要で、確実に合格したければ、8割は得点できるようにしたいところです。
過去問だけでは補いきれない1割から2割については、資格スクールの模擬試験を片っ端から受けること、テキストを繰り返し読むことによって、カバーできます。

しかし、資格スクールの模擬試験を片っ端から受けるのは、費用が掛かりますし、本試験間際になってから、駆け足で開催されることが多く、普段からじっくり勉強できないですよね。
テキストを繰り返し読むことでも、過去問の穴を埋めることもできますが、やはり、テキストを読んでいるだけ(インプット)だけでは、完璧ではなく、実際に問題を解く(アウトプット)ことも必須です。

最近の試験では、単に暗記していれば解ける問題は少なく、暗記した条文、判例をもとに事例問題を解く形の出題が増えています。
公式を覚えるだけでなく、問題演習が必須の数学に似ているといえます。

すると、どれだけたくさんの問題を解いたかによって宅建士試験の合否が決まるといっても過言ではありません。

そして、過去問は、受験生なら誰でも解いています。
そこから一歩抜け出て合格をつかむためには、過去問以外の問題をどれだけ解いたかが、ポイントになるのです。




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□ 本シリーズの特長

過去問よりも少しレベルが高めの問題を掲載しています。

すべての問題に詳細な解説を付して、何を覚えるべきなのか、注目すべきポイントを明確に示しています。

解説をしっかりお読みいただくことによって、過去問+αのαの知識を総整理することができます。

さらに、肢別形式になっていることも特長です。
スマホ等で隙間時間にチェックするのに最適な文章量なので、暗記カード的にご利用いただくこともできます。
posted by 宅建士試験ラノベ化プロジェクトチーム at 19:15| 宅建士試験過去問