2020年01月07日

宅建士試験過去問 権利関係 債務不履行 2−21 平成22年

両当事者が損害の賠償につき、特段の合意をしていない場合において、債務の不履行によって生じる損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば正しいものはどれか。

1、債権者は債務の不履行によって通常生ずべき損害のうち、契約締結当時、両当事者がその損害発生を予見していたものに限り、損害賠償請求できる。
2、債権者は、特別の事情によって生じた損害のうち、契約締結当時、両当事者がその事情を予見していたものに限り、賠償請求できる。
3、債務者の責めの帰すべき債務の履行不能によって生じる損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務の履行を請求しうる時から、その進行を開始する。
4、債務の不履行に関して、債権者に過失があった時でも、債務者から過失相殺する旨の主張がなければ、裁判所は、損害賠償の責任及びその額を定めるにあたり、債権者の過失を考慮することはできない。



建太郎「むむっ……。単純な問題のようで、意外に難しい問題だよな」
胡桃「そうかしら?条文と基本的な判例の知識を問う問題にすぎないわよ。まず、1から見ていくわ」建太郎「1は……。ええっと、こんな規定あったっけ?」
胡桃「次の条文をチェックしてみて」

(損害賠償の範囲)
第四百十六条  債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2  特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

胡桃「債務不履行によって、債権者に損害が発生した場合、債務者はどこまで賠償すべきかが問題になるのよ。どう考えるべきか分かるかしら?」
建太郎「債務不履行と因果関係のある損害を賠償しなければならないということだよな」
胡桃「例えば、建太郎の会社――宅本・オーガナイゼーションでは、賃貸マンションを扱っているよね」
建太郎「ああ。扱っているな」
胡桃「私が宅本・オーガナイゼーションと賃貸借契約を結んだとするわ。契約当日になって、私は引っ越し業者と一緒に、賃貸マンションに赴いた。だけど、建太郎の手違いで、部屋がまだ空いていなかったとするわ。当然、私としては、以前に住んでいた部屋に引き返さなければならないし、引っ越し業者にもいったん戻ってもらわなければならないことになるわ」
建太郎「うん。そんなときは、俺の部屋に引っ越してくれば、いいじゃん」
胡桃「そんなわけないでしょ。以前の部屋を借り直さなければならないし、引っ越し業者へのキャンセル料金とかも発生するわね。つまり、損害が発生しているわけよ。当然、その損害は通常損害として、建太郎に対して賠償請求できるということになるわね」
建太郎「うん。そうだな」
胡桃「もしも、両当事者がその損害発生を予見していたものに限るとすれば、建太郎が、そんな損害が発生するとは思わなかったよと白を切って、賠償に応じないこともあり得るでしょ」
建太郎「うん。そう言い逃れできてしまうことになるよな。そりゃおかしい」
胡桃「そこで、第四百十六条の1項よ」
建太郎「これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。特に条件を付けることなく。つまり、予見可能性を問題にすることなく、損害賠償をしなければならないということだな」
胡桃「そうよ。それが理解出来れば、1がおかしいと分かるわね。次、2にいくわよ。私がいったん、以前の部屋に引き返した後で、もらい火による火災に巻き込まれて、家財の一切を失ってしまったとするわ。そんな時、私としては、『さっさと引っ越ししていれば、火災に巻き込まれずすんだのよ!火災に巻き込まれた分も賠償請求させていただくわ』と言いたくなるわ。分かるかしら?」
建太郎「気持ちは分かるけどさ。そんな要求に応じていたら、なんでもありになっちゃうじゃん」
胡桃「そう思うでしょ。つまり、特別の損害に関しては、一定の歯止めをかけるべきなのよね。そこで、2項よ」
建太郎「『特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。』とされているわけだね」
胡桃「ただ、条文をそのまま読んではだめよ」
建太郎「えっ?そうなの?」
胡桃「判例では、当事者というのは、債務者のことと解しているのよ。債務者が債務不履行をしようという時に、債権者に特別の損害が生じるだろうと予見していたならば、それによって生じた損害を債務者が賠償すべきだということなのよ」
建太郎「なるほど、当事者というのは、債務者のみなのか」
胡桃「もっとも、この条文に関しては、保護範囲説と言って、当事者とは文字通り、債権者と債務者のことだと解釈する学説もあるけど、判例は相当因果関係説と言って、当時者とは債務者のことを指すとしているわ。この問題では、判例の立場を問うているわけだから、2の選択肢は誤りということになるわ」
建太郎「うーん。難しいな。今、胡桃の話したことって、宅建レベルを超えているよね?」
胡桃「超えているわ。でも、正解を見つけるためだけならば、私が話したことを理解していなくても大丈夫よ。3はどうかしら?」
建太郎「履行不能による損害賠償請求権の消滅時効はいつから進行するか?だよな。まず、消滅時効の条文によると」

(消滅時効の進行等)
第百六十六条  消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
2  前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

建太郎「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。履行不能による損害賠償請求権を行使できるのは、本来の債務の履行を請求できる時だよな?」
胡桃「正解。4はどうかしら?」
建太郎「過失相殺は、債務者が主張するかどうかに関わりなく、裁判所が考慮できるんじゃなかったっけ?」

(過失相殺)
第四百十八条  債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。

建太郎「この条文に、但書とか、債務者が主張した時はというような制限はない」
胡桃「そうね。条文そのままだわ。一応判例だから、押さえておいてね。というわけで答えは?」
建太郎「3だね」

b>宅建士試験の合否は過去問以外の問題をどれだけ解いたかで決まる!


□ 過去問だけでは合格できない

宅建士試験では、過去問を制覇すれば、本試験でも6割の得点は固いでしょう。
しかし、宅建士試験に合格するためには、最低でも7割以上の得点が必要で、確実に合格したければ、8割は得点できるようにしたいところです。
過去問だけでは補いきれない1割から2割については、資格スクールの模擬試験を片っ端から受けること、テキストを繰り返し読むことによって、カバーできます。

しかし、資格スクールの模擬試験を片っ端から受けるのは、費用が掛かりますし、本試験間際になってから、駆け足で開催されることが多く、普段からじっくり勉強できないですよね。
テキストを繰り返し読むことでも、過去問の穴を埋めることもできますが、やはり、テキストを読んでいるだけ(インプット)だけでは、完璧ではなく、実際に問題を解く(アウトプット)ことも必須です。

最近の試験では、単に暗記していれば解ける問題は少なく、暗記した条文、判例をもとに事例問題を解く形の出題が増えています。
公式を覚えるだけでなく、問題演習が必須の数学に似ているといえます。

すると、どれだけたくさんの問題を解いたかによって宅建士試験の合否が決まるといっても過言ではありません。

そして、過去問は、受験生なら誰でも解いています。
そこから一歩抜け出て合格をつかむためには、過去問以外の問題をどれだけ解いたかが、ポイントになるのです。




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□ 本シリーズの特長

過去問よりも少しレベルが高めの問題を掲載しています。

すべての問題に詳細な解説を付して、何を覚えるべきなのか、注目すべきポイントを明確に示しています。

解説をしっかりお読みいただくことによって、過去問+αのαの知識を総整理することができます。

さらに、肢別形式になっていることも特長です。
スマホ等で隙間時間にチェックするのに最適な文章量なので、暗記カード的にご利用いただくこともできます。

posted by 宅建士試験ラノベ化プロジェクトチーム at 20:29| 宅建士試験過去問