2019年08月19日

宅建士試験過去問 権利関係 賃貸借 2−14 平成28年 #宅建

AがBに甲建物を月額10万円で賃貸し、BがAの承諾を得て甲建物をCに適法に月額15万円で転貸している場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。




1、Aは、Bの賃料の不払いを理由に甲建物の賃貸借契約を解除するには、Cに対して、賃料支払いの催告をして甲建物の賃料を支払う機会を与えなければならない。

2、BがAに対して甲建物賃料を支払い期日になっても支払わない場合、AはCに対して、賃料10万円をAに直接支払うよう請求することができる。

3、AがBの債務不履行を理由に甲建物の賃貸借契約を解除した場合、CのBに対する賃料の不払いがなくても、AはCに対して、甲建物の明渡しを求めることができる。

4、AがBとの間で甲建物の賃貸借契約を合意解除した場合、AはCに対して、Bとの合意解除に基づいて、当然には、甲建物の明渡しを求めることはできない。







建太郎「むむっ……。これは難しいな。判例の知識を問う問題だよな?」

胡桃「そうよ。それでも問われている判例は基本的なものばかりだから、知っていれば簡単に解けるわ」

建太郎「結局、重要な判例は全部、暗記しなきゃいけないんだな」

胡桃「もちろん、宅建レベルならば、判例を丸暗記すれば、合格できるわ。でも、時々、新しい判例も出てくるから、暗記することと同じくらい理解することも大切よ」
胡桃「まず、この問題が転貸借について問う問題なのは分かるわね」

建太郎「ああ。OK」

胡桃「転貸借が為されるとどういう関係になるのかしら?」

建太郎「条文があったよな。民法の……」




(転貸の効果)

第六百十三条  賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。

2  前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。




胡桃「この条文で注意したいことは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負うとされている一方、賃貸人は転借人に対して直接に義務を負うとはされていない点ね」

建太郎「ということは、賃貸人は転借人の存在を無視することができるのか?」

胡桃「無視するわけではないけど、賃貸人はあくまでも、賃借人との間の権利義務を履行していればよいというわけよ。もちろん、転借人がいることは、賃貸人も承知しているわけだから、完全に無視できるわけではないわ。それでも、必要以上に転借人を保護しなくてもよいということよ。それをふまえて1から見ていくわよ」

建太郎「1は判例なんだよな?」

胡桃「そうよ。判例だけど、とりあえず、この選択肢の事例では、どうすればいいか、自分で考えてみて」

建太郎「ええっと……。賃貸人Aが直接、関わるのは、賃借人Bだから、賃借人Bが賃料を支払わないならば、転借人Cに対して、催告をしなくても契約解除してしまっていいんじゃないかな」

胡桃「そのとおりよ。判例は、選択肢1のようなケースで、賃貸人は賃借人に催告すれば足り、転借人に支払いの機会を与える必要はないとしているわ」

建太郎「うーん。なんか、すっきりしないけど、判例だから、そのまま覚えるしかないんだよな」

胡桃「次、2はどうかしら?」

建太郎「第六百十三条にある通り、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。とされているよね。これは、賃料を支払う義務を負っているということだよな。だから、請求されたら支払わなければならないわけだけど、その額は、AB間の賃貸借契約の賃料である10万円が限度になる」

胡桃「そうよ。転借人は、賃貸人に対して原賃貸借における賃借人の負担義務以上の義務を負わないとされているわ。設問の事例では、Cは10万円さえ支払えばよいわけね。3はどうかしら?」

建太郎「AB間賃貸借契約が債務不履行を理由に解除されてしまえば、当然、転貸借も終了するんじゃないの?」

胡桃「どうしてそういう結論になるのかしら?」

建太郎「ええっと……。AB間賃貸借契約が債務不履行を理由に解除されると、Bは建物を明渡さなければならないし、Aは返せと要求できることになる」

胡桃「Aに返せと言われた時点で、甲建物を占拠しているCはどういう立場になるのかしら?」

建太郎「BC間の転貸借を理由に占拠しているんだよな……。でも、転貸借も終了している?」

胡桃「そうよ。CがAから甲建物の明渡しを求められた時点で、Bは、転貸借契約の転貸人としての義務を履行することができなくなったのよ。つまり、転貸借契約は履行不能に陥ってしまったのよ」

建太郎「ということはCは権限なくして、甲建物を占拠していることになるから、Aからの甲建物明渡し請求を拒むことができないわけか?」

胡桃「そうよ。Cとしては、賃料を支払う資力があったとしても、Aに対しては文句を言えないわけね。後は、Bに対して、転貸借契約の履行不能を理由として契約解除や損害賠償請求をすることになるわね」

建太郎「それに対して、4の事例では結論が異なるわけか?」

胡桃「そうよ。AB間の一方的な合意解除だけで、Cに対して、出て行けというのは、Cにとってあまりに酷だわ。そこで、判例は、賃貸人と賃借人が合意解除しても、特段の事由がない限り、賃貸人は解除をもって、転借人に対抗することができないとしているわ」

建太郎「とりあえず、債務不履行を理由とした解除の場合は、転借人に明渡しを求めることができるけど、合意解除の場合は、転借人に対抗することかできないと覚えればいいんだな」

胡桃「そうよ。いずれも基本的な判例だから、この機会に覚えてね。というわけで、答えは?」

建太郎「1だね」



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