2019年08月07日

宅建士試験過去問 権利関係 賃貸借 2−13 平成25年 #宅建

次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。




1、倒壊しそうなA所有の建物や工作物について、Aが倒壊防止の措置をとらないため、Aの隣に住むBがAのために最小限度の緊急処置をとったとしても、Aの承諾がなければ、Bはその費用をAに請求することができない。

2、建物所有を目的とする借地人は、特段の事情がない限り、建物建築時に、土地に石垣や擁壁の設置、盛土や杭打ち等の変形加工をするには、必ず、賃貸人の承諾を得なければならない。

3、建物の賃貸人が必要な修繕義務を履行しない場合、賃借人は目的物の使用収益に関係なく、賃料全額の支払いを拒絶できる。

4、建物の賃貸人が賃貸物の保存に必要な修繕をする場合、賃借人は、修繕工事のため、使用収益に支障が生じても、これを拒むことができない。







建太郎「むむっ……。これは、簡単そうな問題に見えて、難しくないか?」

胡桃「そうね。宅建試験ではあまり問われない分野の法律知識も問う問題だわ。それでも、正解を見つけることは難しくはないはずよ。まず、1から見ていくわよ」
建太郎「1は何だろう?常識からして間違いだろうということは分かるけどさ……」

胡桃「この選択肢の条文は、宅建のテキストには書かれていないわね。建太郎が分からないのも無理ないわ。次の条文を見て」




(事務管理)

第六百九十七条  義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。

2  管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。




建太郎「事務管理……?」

胡桃「例えば、建太郎がもたもたしているのを見ていられなくて、私が割り込んで、建太郎の代わりに事務処理をしてしまうような場合のことよ」

建太郎「へえ……。これも民法の条文なんだね。事務管理というのは保存行為もできるの?」

胡桃「もちろんよ。法律行為だけでなく事実行為も含むと解されているわ。そして、選択肢1では、事務管理の中でも、緊急性の高い緊急事務管理を行っていると考えられるのよ」




(緊急事務管理)

第六百九十八条  管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。




建太郎「損害を賠償する責任を負わない……。つまり、緊急避難みたいなものか?」

胡桃「建太郎が知っている条文で言えばそれが一番近い制度だわね」

建太郎「ところで1の選択肢は、費用を請求できるかどうかの問題なんだけど……」

胡桃「もちろん、事務管理を行った場合、管理者は、本人に対して償還請求できることになっているわ」




(管理者による費用の償還請求等)

第七百二条  管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。

2  第六百五十条第二項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。

3  管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前二項の規定を適用する。




※(受任者による費用等の償還請求等)

第六百五十条  受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

2  受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。

3  受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。




建太郎「1項だな。『管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。 』とあるな」

胡桃「以上の条文の知識があれば、1の正誤は判断できるわね。次、2にいくわよ」

建太郎「借地借家法にこんな規定ないよな?もちろん、民法にはなおさらだ。建物所有を目的として土地を貸した以上、塀を作るとか盛土することは、ごく普通に行われていることで、いちいち、地主にお伺いしないよな?」

胡桃「そうね。とりあえず、条文を確認しておくわよ」




(使用貸借の規定の準用)

第六百十六条  第五百九十四条第一項、第五百九十七条第一項及び第五百九十八条の規定は、賃貸借について準用する。




(借主による使用及び収益)

第五百九十四条  借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。

2  借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。

3  借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。




(借用物の返還の時期)

第五百九十七条  借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。

2  当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。

3  当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。




(借主による収去)

第五百九十八条  借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。




胡桃「選択肢にあるような建物建築時に、土地に石垣や擁壁の設置、盛土や杭打ち等の変形加工をするといった行為は、建物所有を目的とする借地契約ではごく当たり前のことよ。もしも、貸主がそうした工事が気に入らないとしても、返還する時に、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去すればいいのよ」

建太郎「なるほどそういうことか」

胡桃「3はどうかしら?」

建太郎「賃貸人が修繕しないから、賃料を支払わなくていいなんて言う規定はないよな」

胡桃「んん……。そうとは言い切れないわ」

建太郎「えっ?賃料の支払いを拒むことができるの?」

胡桃「まず、賃貸人には修繕義務があることは分かるわね?」

建太郎「ああ。民法の……」




(賃貸物の修繕等)

第六百六条  賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。

2  賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。




胡桃「そうよ。賃貸人がそれをしないということは、義務を怠っている。つまり、債務不履行に陥っているということよ。分かるかしら?」

建太郎「まあ、そうとも考えられるな」

胡桃「相手方が債務の履行を怠っている場合は、相手が履行に着手するまで、自分の債務の履行を拒むことができるよね?」

建太郎「あっ。同時履行の抗弁だね」




(同時履行の抗弁)

第五百三十三条  双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。




胡桃「そうよ。賃借人も、賃貸人が修繕義務を履行するまでは、賃料の支払いを拒むこともできるのよ」

建太郎「えっ?そうなの?」

胡桃「ただ、全額の賃料の支払いを拒めるわけではないわ。使用収益できない部分に対応して賃料の支払いを拒むことができるというのが判例よ」

建太郎「なるほど……。そういうふうに考えるのか」

胡桃「次行くわよ。4はどうかしら?」

建太郎「これは条文通りだね。今見た、第六百六条2項。『賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。』とされているね」

胡桃「そうね。他の選択肢が、宅建レベルを超えていても、正解の選択肢は、結局条文レベルだから、正解を見つけること自体は難しくないわ。だからこそ、基本をしっかり押さえることが宅建合格の近道なのよ。というわけで答えは?」

建太郎「4だね」



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